Machida Hiroo

ライター&シナリオライター・町田広尾のサイトです

【2016年ベストドラマ】『逃げるは恥だが役に立つ』かわいいのは新垣結衣なのか? 森山みくりなのか?

『逃げるは恥だが役に立つ』

前回より、2016年の私的ベストドラマを紹介しているこのコーナー(前回の記事はこちら)。第2位は今年最も話題となったこのドラマです!

【2位】逃げるは恥だが役に立つ

ガッキーは更新しない。女優の多くは自身の印象を年齢と共に少しずつ変化させていく。10代や20代前半のころは「かわいい」ともてはやされても、ずっと「かわいい」では生き延びられないからだ。

だが、新垣結衣は違う。彼女はアラサー(28歳)となった今でも変わらず、いやそれ以上に「かわいい」を維持している。これはかなりスゴイことではないだろうか。

俳優は容姿が優れていても、良い作品に出会わなければ評価されることは難しい。その点、彼女の近年の主演ドラマ『空飛ぶ広報室』(2013)、『掟上今日子の備忘録』(2015)、そして『逃げるは恥だが役に立つ』(2016)は、いずれもエンタテイメント性に優れた良作だった。この3作すべての脚本を手がけているのが、脚本家・野木亜紀子だ。

計算しつくされた、隙のない脚本

『逃げるは恥だが役に立つ』

本作は家事代行サービスをきっかけに「契約結婚」をした20代女性・森山みくり(新垣結衣)と、恋愛経験ゼロの30代男子・津崎平匡(星野源)のラブストーリー。

野木の脚本にはムダがない。余計だと感じられるエピソードやセリフがないのだ。『逃げ恥』で途中挟み込まれる、情熱大陸らのパロディさえも、遊びのように見えて、ちゃんと状況や感情の説明として機能している。

セリフもリズムよくやり取りを重ねながら、もたつくことがない。で、ここぞというときには「好きの搾取です!」(第10話)のようなキメのセリフも入れてくる。まったくもって隙がないのだ。

新垣の作品を連続して手がけている野木は、どうすれば彼女がかわいく見えるか熟知しているのだろう。だからこそ劇中の新垣結衣は、より輝いて見える。

新垣自身、『中居正広の金曜日のスマたちへ』(12/16放送)に出演した際、「(新垣が)かわいすぎるということで話題になっております」と司会の中居に振られ、「キャラクターがすごくかわいくて、それに影響されて、みなさんがそう思ってくれてるのであれば、すごくうれしいなと思います」とコメントしていた。作品ひいては脚本が「ガッキ=かわいい」に大きく貢献していることは間違いないのである。

とはいえ、ガッキー自身がかわいいのは疑いようのない事実だ。その証左に、金スマ出演時の彼女は、演技をしていない、つまり、森山みくりではなかったが激烈にかわいかったのである! ということで、タイトルの問いへの答えは「両方」が正解なのでした。

新垣結衣、星野源、ファンタジーな人々

『逃げるは恥だが役に立つ』

と、まずは脚本の素晴らしさ(とガッキーのかわいさ)について述べたけれど、キャスティングもバッチリ。契約結婚という題材は生々しい話にもできると思うが、本作ではどこかファンタジックに描いている。

このテイストに新垣結衣がぴたりとハマった。彼女は存在自体がファンタジックな人だ。スキャンダルも聞こえてこないし、新垣結衣“本人”としてテレビなどに登場することも少なく、あまり素が見えない。

性的なイメージも少ないので、「ハグの日」などの描写もキュンキュンしながら観られる。これが例えば、同世代の女優・石原さとみ(29歳)だったりしたら、やはり若干のエロさが出てくるのではないだろうか(主観的意見?)。

星野源もその草食なイメージがぴったりだ。星野はラジオやエッセイで下ネタを多用してはいるが、生々しさがない。もし津崎平匡の役が星野と同じ35歳の浜野謙太(二人は共に元SAKEROCKのメンバー)だったりしたら、同じ「プロの独身」でも「プロの童貞」感が強すぎてしまうと思われる。

かわいすぎると評判のアラフィフ処女・百合ちゃん役の石田ゆり子にしても、風見役の大谷亮平にしても、本作の俳優たちは世間からほんの少し浮いたような、ファンタジーさがある。これが作品に適合、思う存分キュンキュンできる世界を構築してくれた。

 最後に、長くなるので割愛するが、演出は金子文紀、土井裕泰、石井康晴と全員が他作品ではチーフディレクターを務める面々で、どの回も高水準だった。

今年初めに放送された、あのドラマ以来の毎週楽しみで仕方のない作品となった。さて、あのドラマとは……。ということで『逃げ恥』、最終回を前にしての第2位でした。(町田広尾)

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