映画『何者』あなたは佐藤健か、有村架純か? それとも菅田将暉?
Yahoo!映画の評価が低い。
映画『何者』の話である。
本作を観たあと、良い映画だったなあと思いつつ、Yahoo!映画のユーザーレビューを見た。で、驚愕した。
たったの2.7点だったからだ(2016年10月19日時点)。なんたることか。なぜにこんなに低いのか。
大体は想像ができる。佐藤健、有村架純、二階堂ふみ、菅田将暉、岡田将生、山田孝之という、全員が主演を張れるほどの人気若手俳優たちが集まった作品だ(山田孝之は若手ではないか?)。各キャストのファンで、キラキラした青春映画を期待して劇場へ向かった人も多いだろう。
そしたらぜんぜん違うのである。まったくキラキラしてない。今はやりのキュンキュン要素もない。「思っていたのと違う!」。
「テレビドラマで充分」って?
「テレビドラマで充分」という意見もあった。日本映画のレビューでよくある表現だ。「無料で充分」という意味なのか、「映画よりテレビドラマの方が下」という意味なのかはよくわからない。たぶんだけど、「テレビドラマっぽい」と感じたんじゃないか。確かに映像は若干安っぽいというか、リッチさに欠ける感じがするし、ところどころで音楽が鳴りすぎでは? とも思う。
でも、内容的にはまったくテレビドラマっぽくはない。テレビドラマは極端に言えば、音だけ聞いていても分かるようつくられている。映画と違ってテレビの前で、画面をじっと見てくれているとは限らないからだ。だから、セリフは説明のオンパレードであることが多い。わかりやすい例で言うと、『渡る世間は鬼ばかり』ですね。あれは、音だけ聞いていればお話が完全に理解できるようできている。これは良い悪いではなく、そういうメディアだからだ。
そういう視点で見ると、映画『何者』は「テレビドラマで充分」じゃない。本作では登場人物の心理が言葉だけでなく、役者の表情や目線の動きなどで、こと細かに描かれている。つまり画面をじっと見ていなければならない。わからない。友達からのLINEに「ほーい」なんて返事をしながら、ツイッターに「ガッキーかわいい♡」なんて書きながら見ていたって、面白さは伝わらないのだ。
本作の登場人物は就職活動を通して、自分が「何者」かを模索する5人の大学生。プラス山田孝之演じるサワ先輩。
この映画を観て、何も思わない、つまらないと言う人はハッピーだと思う。皮肉じゃないですよ。何者にも左右されない、ブレない、そういう確固たる自分や地位を確率している人だと思うからです。
普通は、というか大抵の人は、自分が他人からどう思われているか、どう見られているのか、気にする。また、どう見られたいのか、考える。程度の差はあれ。理香(二階堂ふみ)や、隆良(岡田将生)が、学生特有の肩書きを名刺にてんこ盛りにしたり、自分のがんばりの「過程」をツイッターに投稿するようにだ。
劇中ではツイッターやインターネットでそれらを表現しているけれど、SNSを利用しない人でも、服装を気にしたりするでしょう。で、そんなアピールをする人間を口では「すごいね」なんてホメながらも、内心ではバカにしていたりする。自分だって「何者」でもないのに。
あなたは佐藤健か、有村架純か? それとも菅田将暉?
本作は就職活動生の物語ではあるけど、そういう気持ちは、社会人になったっていくらだってある。大抵の人は、彼らの中にどこかしら自分を見るはずだ。で、イヤーな気持ちになる。さて、あなたは佐藤健か、有村架純か? はたまた、菅田将暉? 二階堂ふみ? 岡田将生? って全員書くと長いな。
個人的は、内定後の瑞月(有村架純)が隆良に感情をぶつけるシーンにぐさりと来た。彼女の言葉に心当たりのある人は結構多いと予想する。「イタいところを突かれた」って。何を言ったのかは本編でご確認ください。
自分が何者なのかという悩み真っ盛りの就活生の方も、そんなのとっくの前の話だよというオジサンもきっと感じるものがあるはずです。(町田広尾)
監督・脚本 三浦大輔
原作 朝井リョウ『何者』(新潮社刊)
音楽 中田ヤスタカ
主題歌 「NANIMONO(feat. 米津玄師)」
出演 佐藤健/有村架純/二階堂ふみ/菅田将暉/岡田将生/山田孝之
公式サイト http://nanimono-movie.com/
©2016映画「何者」製作委員会