Machida Hiroo

ライター&シナリオライター・町田広尾のサイトです

映画『SCOOP!』二階堂ふみが、よく働いている

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二階堂ふみが、よく働いている。

 2016年公開の映画だけでも『蜜のあわれ』『オオカミ少女と黒王子』『ふきげんな過去』『SCOOP!』『何者』の6本。テレビドラマは『そして、誰もいなくなった』、ドラマ初主演作となる『がっぱ先生!』。さらにバラエティ番組『ぐるナイ』の「ゴチになります!」にレギュラー出演し、J-WAVE『ROCK WITH YOU』では パーソナリティを務める。 

さらにさらにInstagramでは自身の写真を頻繁にアップし、雑誌にも多数登場。先日は週刊プレイボーイ創刊50周年記念号のグラビアでバニーガールに扮していた。なんだろう、この働きっぷりは。

彼女は以前から演技力を非常に高く評価されていたが、仕事を自身が大好きだという映画にしぼっていた。それがこの変わりようだ。どういう心境の変化があったのだろう。

今までの土台からもっと広げたい

この変化に対し、プレイボーイの取材でこう答えている。「20歳過ぎてから、今度は今までの土台からもっと広げたい」。シンプルに「もっと売れたい」と思ったのかもしれない(実際に「朝ドラに出たい」という発言はしている)。

ただ、多くの仕事をこなしていても、クオリティが落ちることは決してない。出演作品では、その湿り気のあるボイスと、心の奥底からわき上がるような感情表現で圧倒的な存在感を見せる。

前置きが長くなったが、映画『SCOOP!』である。本作の中でも彼女はよく働く。行川野火という役柄での話だ。主人公は福山雅治演じる、芸能人や政治家など有名人のスクープ写真を撮り写真週刊誌に売る、いわゆるパパラッチを生業にしている男・都城静。二階堂は新人記者として都城とコンビを組み、昼も夜もなく働く。

本作は紛れもなく「福山雅治の映画」なのだが、ここでは二階堂ふみに着目してみよう。自身の好きな男性アイドルの熱愛現場を撮らされ、野火は静に「マジサイテーですね、この仕事」と言い切る。

だが、若手政治家と人気女子アナとの不倫密会現場を撮影していたのがバレ、SPたちのクルマに追われ、ハリウッド並みのカーチェイスを繰り広げ、ようやく逃げ切った後にこう叫ぶ。「マジサイコーですね、この仕事!」。サイテーからサイコーへ。野火の気持ちが翻ったこの瞬間に、観客は映画の世界へと完全にひきこまれるのだ。

写真週刊誌の記者という仕事は、体力的にも精神的にもかなりのタフさを求められる仕事だろう。人の嫌がるところにわざわざ出向きシャッターを切る。当初はファッション誌への配属を希望していた普通の女の子だった野火が、現場を経験するにつれてどんどん強い女性になっていき、静と共にスクープを連発するようになる。

二階堂ふみはタフな女優

野火を演じた二階堂も、沖縄から出てきたごく普通の少女だったが、大人たちに囲まれて数々の映画で現場経験を積み、タフな22歳になった。大先輩である福山に「どういう風に生きてくると、今の年齢での仕上がり感になったのかなって不思議に思います。マインド的には32、33歳くらいの感覚がしますから」と言わしめるほどだ(映画.comインタビューより)。そして、今や冒頭に上げたような八面六臂(はちめんろっぴ)の活躍ぶりを見せている。

そんな二階堂だからこそ、行川野火という若くしてタフさを要求される役を、説得力を持って演じられたのだろう。物語のラストでは野火にとって最もつらい試練が与えられるが、このシーンの野火の、二階堂の表情に心をうたれる。最後に、彼女の赤い髪がとてもよく似合っていることを付け加えておこう。(町田広尾)