Machida Hiroo

ライター&シナリオライター・町田広尾のサイトです

映画『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』宮藤官九郎の新たな傑作にシビれろ!

TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ

映画には個性が大事です。もちろん、お約束通りの安心して観られる作品を求めているときもあるけれど、その作品にしかないキャラクター、セリフ、設定、テーマなどが観られるとやはりうれしい。

『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』は、死ぬほど個性的な映画です。宮藤官九郎という作家が、想像力を最大にまで駆使してつくり上げた、オリジナリティにあふれまくった快作。

コメディー映画と同時に音楽映画でもあります。爆音で流れるロックミュージックを全身で体感するためにも、映画館で観ることをぜひオススメしたい!

あらすじ

ごくフツーの高校生である関大助(神木隆之介)は、同級生のひろ美(森川葵)に恋をしている。だが修学旅行の途中、バスの転落事故で死んでしまった。彼が目覚めると、そこはなんとホンモノの【地獄】。

そこで地獄農業高校の軽音楽部顧問で、地獄専属ロックバンド・地獄図【ヘルズ】を率いる赤鬼キラーK(長瀬智也)と出会った大助は、現世に転生するため、文字通り地獄の猛特訓を受ける。

宮藤官九郎が仕掛ける怒濤(どとう)の展開に身をゆだねろ!

映画が始まってすぐ、大助はバスの転落事故に遭って死に、地獄に墜ち、キラーK率いるロックバンド・地獄図【ヘルズ】のライブに出くわします。爆音で流れる音楽、画面に大写しになる意味不明の歌詞。まだ開始から5分くらい? のっけから怒濤のペースに圧倒されます。

主人公の大助はわけがわからないだろうけど、観ているこっちもわけがわからない。一体何が起きているのか? 劇中の主人公と気分は同じです。

その後、ここが地獄であること、転生するためのロックコンテストが開催されていること、転生するチャンスは7回までといった、この映画の「ルール」が、笑いを織り交ぜながらテンポよく説明され(「早く言いたい〜」のレイザーラモンRGネタ!)、その世界観にずるずるとひきずり込まれていきます。

地獄は当然、誰も観たことがない想像の産物です。その舞台をつくり上げるために、宮藤監督は演劇の手法を意識したといいます。ここで監督の言葉を、パンフレットから引用してみましょう。

僕はもともと演劇からキャリアをスタートしたのに、これまで映画では演劇の手法を活かしたことがなかったなと思い、今回はあえて舞台の方法論を映画に引用しようと思いました。

演劇は、お客さんの想像力を刺激して、限られたスペースの中で広がりのある世界を表現するわけですが、そういうチャレンジを映画でやってみたいな、と。

この試みは成功していたと思います。「リアルな地獄」なんて誰もわからないもの。

長瀬智也、神木隆之介が暴れまくる! カメオ出演を探すのも楽しい

これまでにも宮藤作品で何度もタッグを組んでいる長瀬智也は、縦横無尽に暴れまくります。長瀬は【地獄】での「赤鬼」と【現世】での内気な青年「近藤」という両極端の役柄を完璧に演じていました。

長瀬くんは日本の俳優さんじゃないようなダイナミックな演技をするので、ジャック・ブラックの『スクール・オブ・ロック』みたいに、強烈なキャラクターが映画を引っ張っていくアメリカのコメディみたいな作品が作れるんじゃないか、と。

と宮藤監督が言うように、やはり長瀬は宮藤のとってのミューズなのです。

もう一人の主人公・神木隆之介もスバラシイ。はっきり言って大助という役は、「お調子者」でちょっと間違うと観客に「こんなヤツどうなっても知らんわ、ハハ」と思われる恐れがあるのですが、そうはならない絶妙なラインで演じているのです。

そしてヒロインの森川葵がバツグンの存在感を見せています。高校のクラスにいたら、誰もが好きになるようなまさに理想の女子。

観ている途中、「あれ? 森川葵って鼻のところにホクロなんてあったっけ……?」と思っていたら、中盤でそのタネ明かしが。ぜひ観て確認を。

ほかにも、尾野真千子、桐谷健太、清野菜名、古舘寛治、皆川猿時、古田新太、宮沢りえと皆良いし、ちょいちょいカメオ的に出演している面々がまた面白い。

みうらじゅん、Char、マーティ・フリードマンあたりは誰でもわかると思うけど、中村獅童に至っては、パンフレットを見るまで全く気づきませんでした。まあアノ役であればそれも当然だと思うけど(何の役かはここでは書けない!)。

爆音で流れる音楽にシビれる!

本作はコメディ映画であると同時に、音楽映画でもあります。パンクロックに造形の深い宮藤監督ですが、今作では「間口の広い音楽を」ということで、ロックを選んだそう。

劇中曲を作曲したのは、向井秀徳(向井は劇伴も担当)、KYONO、益田トッシュという面々。詞はすべて宮藤監督自身が書いています。爆音で流れる音楽に脳内はシビれっぱなし。

冒頭にも書いきましたが、音楽を体感するためにも本作は映画館で観ることをぜひおすすめします。僕、マチダがイタリア人ならば、観終わったあとスタンディングオベーションをしたでしょう(イタリア人ではないのでしてませんが)。最後に全曲の曲名を記して、この長ったらしい感想を終わりにしようと思います。

TOO YOUNG TO DIE! 地獄の歌地獄

TOO YOUNG TO DIE! 地獄の歌地獄

 

 「TOO YOUNG TO DIE!」作曲:KYONO

「天誅」作曲:向井秀徳

「天国」作曲:向井秀徳(ハードバージョンの編曲:KYONO)

「地獄農業高校校歌」作曲:向井秀徳

「五戒の唄」作曲:向井秀徳

「閻魔をたたえる唄」作曲:向井秀徳

「じゅんこのテーマ」作曲:益田トッシュ

「デビルハラスメント」作曲:益田トッシュ

「スーサイド」作曲:向井秀徳