Machida Hiroo

ライター&シナリオライター・町田広尾のサイトです

映画『夏美のホタル』感想 有村架純、舞台挨拶で「ほんまかよ?」

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世の中には面白い映画はたくさんあります。だけど、心から「いい映画だった」と思える映画はそう多くはない。『夏美のホタル』は、その多くはない映画の一本です。

舞台挨拶で有村架純のツッコミにキュンする

公開初日に新宿シネマカリテにて、舞台挨拶付きの回を鑑賞。ここの劇場は全96席(シネマカリテ1)と非常にこじんまりとしているので、どの座席から観ても出演者は「ほんのすぐそこ」という感じ。

前方の席だとあまりに近すぎて逆に見づらいほど(目が合うかも〜と思い、恥ずかしくなっちゃうので)。

登場したのはキャスト陣から、有村架純、工藤阿須加、小林薫、光石研、吉行和子。廣木隆一監督、原作者の森沢明夫。マスコミ取材も入ってないので、みんなリラックスした雰囲気でした。

司会から「有村さんの印象は?」と聞かれた工藤が「こんなに魅力的な人がいるのか? と思いました」と答えると、有村が「ほんまかよ?」と関西弁でツッコミ。

すると女子の観客からは「かわいい〜」との声が(僕、マチダは心の中で)。ここがマチダ的には舞台挨拶のハイライトでした。

『夏美のホタル』

ロビーには有村架純と一緒に写真を撮れるパネルが!

美しいロケーションにウットリ

舞台挨拶の紹介でいきなり(有村架純の)ファン目線丸出しになってしまいましたが、『夏美のホタル』はホント、いい映画なのです。

写真家志望の学生である夏美(有村架純)は、死に別れた父との思い出の地に写真を撮るため訪れる。そこで商店を営む通称・地蔵さん(光石研)とヤスばあさん(吉行和子)という親子に出会い、居候をさせてもらうことに。そこへ夏美の恋人・慎吾(工藤阿須加)もやって来て、ひと夏を過ごすことになる。

将来の夢に悩む若者と、家族愛が主軸として描かれています。物語としては特に目新しさがあるわけではありません。というか、いたって平凡。

でも。でもですね。

俳優たちのナチュラルな演技、どこをどう切り取っても美しい景色、的確な演出。この3つがそろっている。もうそれだけで、充分過ぎるほどなのです。

演技のことは後に書くとして、まずはロケーションのこと。

メインの舞台となる商店は、原作者の森沢明夫がかつて訪れていたという、千葉県大多喜町にある古い雑貨店をリメイクして使用されているのですが、この商店が実にいい味を出しています。

周りは自然に富んでいて、山の緑、夏の光、川の水面と、どのシーンも目に美しい。 もう、これだけでウットリしてしまいます。

冴える廣木演出

人物との距離感が絶妙なのです。適度な距離を置き、登場人物たちを見つめる。 簡単に言うと、カメラが彼らに近づかない。アップも少ない。 とても重要なセリフのところで、背中の姿を遠くから撮ってるだけ、みたいな感じなのです。

「ハイ、ここ大事ですよ〜」「ここ泣くとこですよ〜」みたいな押しつけがましさが全然ない。 音楽もほとんどかからない。だから自然に彼女、彼の人生を観ている気持ちになります。

廣木作品は現在『オオカミ少女と黒王子』も公開中。こっちは少女漫画原作で、バリバリの商業映画。公開館数も286館と全然違う(『夏美のホタル』は33館)。

どちらのタイプでもきっちりとクオリティを保つという、幅の広さには驚かされますね。 

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有村架純のナチュラルな演技

有村架純が本作に出会ったのは約4年前で、撮影は去年2015年の8月。『ストロボ・エッジ』(2015)、『映画 ビリギャル』(2015)がヒットした後です。

もともと原作のファンで、気合いを入れて臨んだそうですが、その気合いとは別に、いい具合に力の抜けたナチュラルな演技を見せています。

マチダはテレビドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』であまりに自然な演技をする彼女を観て「有村架純ってこんなにいい女優だったのか!」と一気に注目するようになりました。

撮影の順番的にはこの『夏美のホタル』の方が先だったんですね。本作で培った芝居が後の『いつか〜』に生きたのでしょう。

ちなみに劇中で彼女は大型バイクを乗りこなしているのですが、「クランクインする前に免許を取る時間がどうしても取れなかった」そうです(舞台挨拶で言ってました)。つまり、まあ……そういうことです(察してください)。 

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光石研、吉行和子、小林薫のベテラン勢

 他にも夏美の恋人・慎吾を演じた工藤阿須加も本人のマジメな雰囲気が役にマッチしていて、良かったですね。廣木組初参加の彼は相当しごかれ、ワンシーンに3〜4時間もかけられたとのこと。

この若い二人を支えるのが、光石研、吉行和子、小林薫の超ベテラン勢。

光石研、小林薫二人のシーンなんて「おじさん俳優ツートップが!」と贅沢な気分に。彼らの土台がしっかりしているので、若い二人が伸び伸びと演じられているように感じます。

実に気持ちの良い映画

というわけで、公開初日に観てきてのレビューでした。ホントに何でもない物語ではありますが、役者、ロケーション、演出の良さがそろった、実に良い夏の映画です。

公開館が限られているのが残念ですが、観られる方はぜひ。

天気の良い昼下がりに観て明るいうちに映画館を出ると、とても良い気分になれるでしょう。(町田広尾)

【早期購入特典あり】夏美のホタル [DVD]

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夏美のホタル(2016)

監督 廣木隆一
原作 森沢明夫『夏美のホタル』(角川文庫刊)
脚本 片岡翔/港岳彦
出演 有村架純/工藤阿須加/小林薫/光石研/吉行和子

公式サイト
http://natsumi-hotaru.com/

©2016「夏美のホタル」製作委員会 

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